安全に会社設立
新しい人材マネジメントを考えるにあたっても、新しい雇用形態と、それを相乗的に補完する評価制度を軸に考えることが緊急の課題となっている。
終身雇用制度に代わる新しい雇用形態としては、選択雇用制度を提案する。
選択雇用制度とは、企業が戦略に沿ったさまざまな形態の人事制度を提供し、従業員はそこから自分の人生設計に合った制度を選択できる人材マネジメントである。
企業は経済環境に応じて必要な人材を確保し、働く側は、人生設計に応じて最適な制度を選ぶことができるのである。
このようなコミットメント型人材マネジメントによって、さまざまなことが変わっていく。
経営者は企業戦略を明確にし、人材を組織化していくことが最重要課題となる。
人事部の役割も大きく変わっていく。
人事部は、従業員の管理から、経営者のビジネスパートナー、現場のコーディネーター、社員のコンサルタントとしての多面性を持った役割になる。
また、人事情報システムも、従業員データ管理から人材の可視化や経営支援の判断ツールとして役割を変えていく。
そのなかで、会社と従業員の関係が最も大きく変わっていく。
欧米のような宗教観がない日本社会にとっては、会社は働く場所であると同時にした。
その生き方は、自ら選択した生き方ではなく、会社によって与えられた生き方だった。
それが、終身雇用と年功序列に基づいた日本的経営の限界であった。
敗戦の焼け野原から経済成長を支えてきたサラリーマンにとって、自分で生き方を選ぶ余裕などなかったのだ。
職業の選択は生き方の選択でもある。
選択雇用制度は、閉塞感のあるサラリーマン社会に、新しい生き方と多様性をもたらす。
また、プロセス育成型評価制度により、プロフェッショナルな人材となった社員は、仕事を通じて自己実現を図ろうとする。
従業員は専門的な能力により企業目標に貢献し、会社は従業員の能力開発の機会を提供する。
人材価値を高めることによって企業価値を創造していくコミットメント型人材マネジメントにより、企業と従業員はお互いに尊敬し合う対等な関係を築き上げていく。
これまでの日本的経営は、従業員を雇用で束縛する。
目的としての。
終身雇用であり年功序列であった。
欧米の優良企業では、日本のような生涯雇用を保証する終身雇用制度の概念は存在しない。
それらの企業にも、何十年も長期雇用を続けるベテラン社員が多数存在する。
彼らは高度な専門性を持ち、マーケット・アビリティも高い。
にもかかわらず、企業のなかで長期間働いているのは、その企業が提供する人材マネジメントが自分の価値を向上させていることを知っているからだ。
彼らの企業に対する帰属意識はきわめて高い。
休日には、街中で会社のロゴの入ったTシャツを着ている人を多く見かける。
高い専門性と帰属性の強い人材は、企業にとって欠かせない競争力となる。
だから企業は彼らが長期間働ける環境を提供する。
彼らは結果として終身雇用を全うし、人材価値に基づく勤続年数に応じた昇給によって、結果としての年功序列の賃金を手にしている。
コミットメント型人材マネジメントが日本企業に根づいて、再び終身雇用や年功序列が日本的経営の代名詞となったときに、企業と従業員の新しい社会契約が始まる。
ポスト・コミットメント型人材マネジメントの社会では、労働市場のビッグパンが加速化していく。
企業と従業員の関係は、より対等な関係に近づくのだ。
従業員は企業に能力を提供する個人事業主に近い存在になる。
企業は社内外に専門性の高いスキルを持った人材を組織化することで、社会に新しいサービスを提供するようになる。
働く側はポータブル・キャリアを形成し、それに対応して、完全個別人事管理が実行されていく。
そのなかで生き残る企業は人材価値を向上させ、人材に選ばれる企業である。
この本質だけは変わらない。
働く側はいま、企業に求めるものを変え始めている。
これまで従業員は会社に安定した雇用の保障を求めてきた。
日本的経営が崩れつつある現在、自分の人生を全面的に会社に委ねるのを危険と感じるようになった。
従業員は、仕事を通じた自己実現やマーケット・アビリティを高めることを目指し、専門性に基づいたキャリアを考えるようになった。
自分のキャリアプランを考えるなかで、最先端技術に携われる仕事や、能力の継続向上が可能な職場を探すようになっている最近の雇用調査によると、新卒の若者の離職率が急上昇し、入社後3年以内の離職率は○○%に達している。
終身雇用が崩れつつある現状では、従業員の企業に対する帰属意識は著しく低下しているのだ。
一方、企業側が従業員に求めるものも変わり始めている。
右肩上がりの経済成長下では、高品質・同一規格製品を大量に生産するために、従業員の同一規格性が求められた。
個人の能力ではなく集団としての成果が求められ、組織のために自己を犠牲にする忠誠心が尊ばれたのである。
グローバル化の多品種少量生産経済下では、仕事が高度化し、複雑になった。
そこで、企業は専門知識を持ち、かつ課題処理能力に優れ、状況を読み、適切に対応できる人材を求めるようになった。
企業競争力の源泉が人材である以上、有能な人材の採用と長期雇用を動機づける制度が必要であった。
いままでは、勤続年数ごとに上がっていく年功序列制度がその役割を果たしてきた。
求められる人材能力の変化は、年功序列に代わる企業と従業員を結ぶ新しい鮮を必要としている。
それがプロセス育成型評価制度である。
プロセス育成型評価制度とは、問題解決のプロセスに重点を置いた、継続的な能力開発を行う人事制度である。
ビジネスで成果を上げるプロセスを、徹底習得する思考をプロフエヅショナルな人材を創造する“プロセス育成型評価制度"と行動の育成を目的としている。
優れた企業は、独自のビジネスプロセスを持っている。
たとえばG社のシックスシグマやトヨタの改善プロセスである。
これらは、最初は品質管理のなかで歩留まりゼロを目指したプロセス改善であった。
だが、組織のあらゆる場面で、この考え方を業務改善に適用するようになった。
新しい経済状況下で企業が生き残っていくためには、自社の技術やサービスを。
差別化し続けられる。
プロセスとしてつくっていくしかないのである。
プロセス育成型評価制度は、仕事を通じての能力開発と価値観の共有を目指した、企業と従業員との新しい粋である。
能力開発できるのは思考と行動。
評価制度の本来の意味は、業務を遂行するうえで、足りない部分を本人に自覚させ、その部分を補う能力開発を行うことである。
フィードバックによる人材開発こそが大切であり、給与や昇給などの処遇に優劣をつけることは本来の目的ではない。
ここで大切なのは、能力開発によって変えられることと変えられないことを区別することである。
変えられることだけを評価の対象として、能力開発を行っていくことだ。
まず、変えられないこととは何か。
感情や信念である。
直属の上司の人格を好きになれと命令されても、感情が受けつけなければムリである。
感情や長年培ってきた信念を変えることはできない。
では、変えられることとは何か。
思考や行動である。
上司の人格は好きになれなくても、上司の仕事のやり方を真似することはできる。
業務を遂行するうえで必要な考え方やスキル、業務の処理方法は変えることができる。
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